山さんの 快適トレッキングのすすめ 基礎知識編 2-2


3 山でのルール・4その他山の医学

【3 山でのルール】
山でのルールといっても多くは日常の生活のマナーとかわりがありませんが、自然に包まれた山では、環境保護といった点でも注意する必要があるものがあります。またディスクの多い山では安全確保という面でも実行すべきマナーがあります。

・挨拶をかわしましょう。
 
山歩きでは行き交う登山者同士が「こんにちわ」というあいさつが定着しています。登山者がおたがい心地よく山歩きを楽しむために、実行していきたいマナーです。急坂などで息がつまってつらいときは、軽く会釈をするだけで気持ちは伝わるもの。

・登り優先、安全優先
 
山道で交差するのに充分な道幅がない登山道では登り優先で、下りの人が道をゆずるのが基本。下りの方が前方を把握しやすいため、また登ってくる人を励ますという気持ちも込めたいものです。しかし片側が谷になっている所や、沢にかかっている危険そうな橋などの場合はケースバイケースで安全が確保されている方が優先にクリアをして行く。

・ゴミはすべて持ち帰る
 
山に持ち込んだ自分の荷物のゴミはすべて持ち帰る。食べ残りの物や、いつか土にかえる果物の皮などのポイ捨ても、野生動物の棲息に影響がでるためです。休憩のあとはゴミなどの忘れ物はないか、再度確認してから後にするようにしましょう。たばこのポイ捨ては絶対やめましょう。

・ローインパクト
 
山に入ればなにかしらインパクト(影響やダメージ)を与える事になります。それを出来るだけ最 小限に食い止めるのがローインパクトです。高山植物のお花畑に踏み込むと少なからず植物はダメージを受ける事はすぐにでも想像はつくでしょうが、いま花の咲いていない地面でもこれから芽生える植物があるかもしれません。ですから歩くのは登山道だけ。木道や木段のある場所では道を外れない事がルールです。

・山でのトイレ
 
山での歩行中に困る事があるのがトイレです。トイレを気にして水分の補給を控えると、疲れやす くなるばかりか、夏には脱水症状を招く事があります。よく整備されたハイキングコースなどにはコース中に公衆トイレがあります。また山小屋のあるコースではその設備が有料の場合もありますが利用出来ます。しかし公衆トイレや山小屋のないコースなどでのトイレは仕方なく登山道をはずれて茂みなどで用を足す事もあります。そのような場合は危険な場所ではないか、安全を充分に確認して、使用後は跡を残さず、使用した紙なども持ち帰る努力をしたいです。

・植物や昆虫、動物の保護に協力しましょう
 
高山に植生する植物や各種昆虫、動物は絶滅種のものも多く見られ、貴重な自然の贈り物です。山を愛し、自然を愛する多くの自然愛好者たちは自分達世代のみの自然ではなく、子供、孫、ひ孫その先未来に至までこの自然を残す義務があります。ローインパクトに気を使いいつまでもこの美しい自然を人間の財産として残すよう努力して行きましょう。


【4 その他山の医学】

・高山病
 
高山病は2500mの上の高地では人は誰でも低気圧性低酸素に対して同じ反応が出ます。しかしその人の適応力によって症状が異なります。高度が増すと気圧の低下により酸素分圧は下がり、4000mで平地の3分の2, 6000mで約2分の1, 8000mになると約3分の1にもなり医学的にも生存が不可能なレベルです。人の体は高所での低酸素に対して、心拍数と呼吸数を増やして順応しようとしますが、最初はのうちは過呼吸による低炭酸がス血症と体液のアルカリ化によって息切れ、脱力感、頭痛、吐き気、不眠などの症状が出ます。人間は1日に1000m以上の高度を上げると順応出来ない事があります。
高山病の治療は安静と水分の摂取により順応を待つほかありませんがアスピリンなどの軽い鎮痛剤によって頭痛を抑えたり、酸素吸入によって症状を軽減させるのは順応に有効です。

高山病の予防と致しましては
 ・水分不足を起こさないように
 ・過度の疲れを残さないように
 ・心臓、肺への負担を軽くする歩き方
 ・高山の山小屋に着いてもすぐに寝ないように、高度に順応出来るよう散歩、軽い飲食などしましょう


・熱けいれん
 
こむら返りといわれる筋肉のけいれんは、過度の筋肉の疲労と水分と塩分の補給アンバランスから来る熱中症の初期症状の一つです。治療法といたしましては休憩をして、けいれん筋のストレッチとマッサージを行い、その後の行動に水分、塩分の補給に注意をします。

熱けいれんの予防と致しましては
 ・朝梅干しを食べて出発、または筋肉に過度の疲労を感じたら早めに水分と塩分の摂取を。
 ・筋肉に無理な疲労をさせないように行程、歩き方に工夫を。


・日射病
 
高山では太陽を避けるものがなく、常に炎天下の行動となります。そのため頭部の露出部に直射日 光が当たり、脱水と相まって日射病を引き起こします。発症すると顔が蒼白になり、冷や汗をかいて全身の皮膚をじっとりと冷たくなります。治療法といたしましては涼しい場所で頭を低くして休ませ、塩分と糖分を含む冷たい飲み物を飲ませます。体温は上がっていないのであまり冷やす必要はなく、汗を拭いて、少し風を送ってやる程度で充分です。

日射病の予防と致しましては
 ・炎天下では帽子は必ずかぶる。
 ・暑くても長そでのシャッと長ズボンを着用、皮膚の露出を少なく。
 ・適切な水分の補給を。
(これ以上ひどくなると、熱疲労、熱射病となりますが、この段階になりますと医者が必要となって来ますので最悪でも日射病程度ですますようにしましょう。)


・凍傷
 
凍傷は長い間の低温環境での血流の停滞により手足の指が受傷する病です。
凍傷になった場合はすぐさま安全な環境下に下山して、医師の支持にしたがって治療を受ける事です。
自分でむやみに処置等は避けた方が懸命です。

凍傷の予防と致しましては
 ・衣服、手袋、靴、靴下を濡らさないように。
 ・低温環境下では血流を保つために、常に意識して体を動かす、特に手、足の指を。
 ・低温環境下での長時間の行動は避ける。


・雪盲
 
山では紫外線が強いので、夏山でも冬山でも目を保護するということで、サングラス、ゴーグルは登山の必需品です。雪盲や夏の紫外線に目をやられた場合はサングラスをかけ、目を閉じている時間を長くして暗い所で目を休めましょう。



カラマツソウ

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